1万倍近い価格差の古くて巨大なドイツ製スピーカーを背景にした、小さなブルートゥーススピーカー(このオーディオ入門の幅広さの象徴として)
私(小林)はヴィンテージオーディオの愛好家で、小学生のときから50年近くスピーカーやアンプをいじっています。松本市でオーディオショップを開店することになった友人と、「なにか共同プロジェクトを」ということで、流行りのレトロ風より本格的な、本物のヴィンテージユニット使用のブルートゥーススピーカーをやることになりました。安曇野のサウンド&パーツさんも参加しておられます。
そこで流行りのオーディオ製品をリサーチしてみると、一般家庭用のオーディオ装置としては、アンプやスピーカーを組み合わせるコンポーネント形式という従来タイプはさらに衰退し、スマホなどから無線で音楽データを送るブルートゥーススピーカーや、TVの前に置くサウンドバーなどが急伸しています。その一方、昔のアナログレコードが人気で、手間のかかるレトロ的なものと、便利で安価な最新家電的なものに2極化していく傾向は、やはり世の流れを反映していますね。
変化に追いつけないベテラン愛好家(私も)が多いですが、最新機器も昔のものと勘所はいっしょですから、分かってしまえば簡単です。一方で、ネットや量販店などでの家電品的な情報しか知らない入門者には、もっと奥深い趣味としてのオーディオの世界が理解できたら、広い視野で製品をチョイス出来るようなると思います。
そういったあたりを含め、長年の無駄使いによる経験と、本業からのデジタルの知識を基にご説明できたら、と考えています。とくに、ストリーミング配信とヴィンテージオーディオの相性がバツグンなので、そこまでたどり着きたいと考えていますが、まずは手始めに、複雑化したオーディオ装置を大雑把に分類してみましょう。
【2020年におけるオーディオ装置の大雑把な分類表】
・お手軽オーディオ(デスクトップ、ブルートゥースス、AIスピーカー)
・TVオーディオ(サウンドバー、テレビ内蔵オーディオ)
・ミニコンポ
・コンポーネントステレオ
・ホームシアター用オーディオ
・ハイエンドオーディオ
・カーオーディオ
・ヘッドホン(イヤホン)
・ヴィンテージオーディオ
・DIY(自作)オーディオ
こんな感じでしょうか? リストの中で最も未知の物体がサウンドバーなるものでしたので、さっそく流行りの製品を購入(SONYのHT-G700)しました。サウンドバーが音楽再生用に使えるか試しに買ってみるという、またまた無駄使いをしてしまった直後に、ステレオサウンド社の管球王国編集部から、大御所の新忠篤さんによる真空管アンプの試聴を依頼されました。(よろしければ管球王国を購入して、濃密なオーディオの情報を楽しんでください)
試聴中の新忠篤さんの真空管アンプ(奥に見える黒い方のオイロダインという名前のスピーカーを使用)
サウンドバーにCDプレーヤーを接続して何枚か聴いてから新忠篤さんのアンプを聴くと、やっぱりこちらの方がずっと楽しめて、次々と聴きたい音楽が出て来ました。サウンドバーには合計300 Wものアンプが内蔵されていて、素晴らしい新技術が満載されているのに対し、新忠篤さんのアンプはステレオの合計でたったの10 Wしか出ないのですが、より大きな音量と豊かな表現で音楽を再生しました。じつは、この違いのなかにこそオーディオの楽しみと奥深さがあるので、後ほどじっくりとご説明します。
なお、この入門は俗にピュアオーディオと呼ばれる分野が中心で、カーオーディオとヘッドホンは扱いません。なんだか最近のヘッドホンは、難聴の人が増えているのに対応するためか、高音がきつくて聴いていられない製品が多いようです。末永く音楽とオーディオを楽しむために、「ヘッドホン難聴」で検索して調べ、耳を大切にしてください。WHOの推奨するヘッドホンやイヤホンの使用時間は、なんと1日に1時間未満です。
昔のフィリップス社のレコード制作現場では、バランスエンジニアの難聴を防ぐために大音量の出ないコンデンサスピーカーを使っていたと、当時の責任者の方から聞いています。今回はちょっと脱線してしまいました。次回は元に戻してサウンドパーについて書きます。
【Q&Aと用語でオーディオ入門1】(2020年10月)