【入門4】ウルトラブルーレイディスクプレーヤーはCDでの音楽再生に使えるか?

ソニー(SONY)のウルトラブルーレイプレーヤーUBP-X800M2とアキュフェーズ(Accuphase)の古いDAコンバーターDC-81Lの組み合わせ
ソニー(SONY)のウルトラブルーレイプレーヤーUBP-X800M2とアキュフェーズ(Accuphase)の古いDAコンバーターDC-81Lの組み合わせ


 このごろ定額配信サービスで音楽を聴く人が増えて、CDはあまり売れなくなってしまいました。かく言う私も、所有しているCDですら探すのが面倒でNAXOSの定額配信で聴くという有り様です。そうなると、元より根拠の怪しい高額製品が多かったCDプレーヤー(SACDも含む)は、たとえオーディオ愛好家であっても、だんだんと買う意義が弱まってしまいます。

 そこへ来て、今年(2020年)にオンキョー(Onkyo)が債務超過になってオーディオ機器の製造を縮小したため、安価なCDプレーヤーのなかでは気に入っていたC-7030が製造されなくなってしまったようで、「それほど重要性はないけどCDプレーヤーは欲しい」という人にお薦めできる機種がなくなってしまいました。新たに安いCDプレーヤーを何台か買って試すのが大変なこともあって、今後はCDにしろブルーレイにしろ、ディスクを買うということ自体が激減しそうなことから、映像の出ないCD(SACD)プレーヤーと映像の出るブルーレイプレーヤーの両方を所有する必然性は乏しいだろう、という結論に至りました。

 そこで、ソニー(SONY)のブルーレイプレーヤーUBP-X800M2を購入してみました。4万円強と真空管2本分くらいではあるものの、またまた無駄使いです。少し前に購入した同じくソニーのサウンドバーHT-G700と組み合わせてウルトラHDブルーレイの4Kコンテンツを視聴してみると、ドルビーアトモスとか最新機能が体験でき、優れた製品であるということと、「再生音場は、やはり視覚の強い影響下にある」ということが分かりました。画面が小さいと音場も狭くなりました。そのあたりはネット上にいくらでも評価レビューがあるでしょうから、そちらにおまかせして、はたして「ウルトラブルーレイディスクプレーヤーはCDでの音楽再生に使えるか? 1台ですべて賄えるのか?」という本題に答えるべく実験をしました。

 UBP-X800M2だってCDが再生できるに決まっていますが、問題は我々オーディオ愛好家が納得できる音が出るかどうかです。うるさい愛好家にブラインドで聴かせたら「往年の名CDプレーヤーが鳴っている」と勘違させるような音をUBP-X800M2から出すため、組み合わせたのが1988年に47万円で発売された、アキュフェーズという高級オーディオメーカーのDAコンバーター(DAC)です。DACの心臓部をICではなく、超精密抵抗をハンダ付けして作ってしまった名機で、私はDAC基板を自分たちで開発するまで使っていました。


ソニーのUBP-X800M2には光出力が無いので、同軸出力をアキュフェーズDC-81のCOAXIAL-1入力に接続した状態
ソニーのUBP-X800M2には光出力が無いので、同軸出力をアキュフェーズDC-81のCOAXIAL-1入力に接続した状態


 上の写真のように、UBP-X800M2の同軸出力(コアキシャル)とアキュフェーズDC-81の入力を、アマゾンベーシックのケーブルで接続しました。アマゾンベーシックのケーブルは、光(トスリンク)はごつくて使いにくいのですが、この同軸ケーブルは柔軟で良いフィーリングでした。本当はプレーヤーの電気回路のグラウンドとDACのそれが接続されない光接続の方が有利なのですが、UBP-X800M2には光出力がありません。パナソニックのDP-UB9000やパイオニアのUDP-LX800など、上位機種なら光出力もありますが、先細るディスク購入を考えると、高額機種は対象外とせざるをえません。


UBP-X800M2とDC-81Lの組み合わせで試聴したCDのうちの一枚で、UBP-X800M2の上に載せて撮影した
UBP-X800M2とDC-81Lの組み合わせで試聴したCDのうちの一枚で、UBP-X800M2の上に載せて撮影した


 アンプには自作の真空管アンプを、スピーカーにはドイツはSIEMENSの鉄仮面と呼ばれるヴィンテージの名機を使い、上の写真に示すCDなどを聴きました。CDの手前に映っているUBP-X800M2には豊富な機能を誇らしげに示すシールが貼られていて、我が家には稀なHi-Res(ハイレゾ)マークもあります。 Hi-Res マークが付いた製品は、コウモリやイルカが出す音波よりは低めの超高音が出せるということです。


CDを再生中のUBP-X800M2の本体には、なにも表示されない
CDを再生中のUBP-X800M2の本体には、なにも表示されない


 再生を始めてすぐ、重要なことに気付きました。UBP-X800M2の正面にある黒くて艶のあるところのことを、私は表示パネルだと思い込んでいたのですが、ただのアクリル板だったようでなにも表示されず、CDの何曲目を再生中なのかも分かりません。上の写真は、ちゃんとCDを再生している最中に撮影したものです。


UBP-X800M2の本体にはなにも表示されないので、しかたなく液晶モニターを接続すると、水玉のようなものを背景にトラック番号などが表示された
UBP-X800M2の本体にはなにも表示されないので、しかたなく液晶モニターを接続すると、水玉のようなものを背景にトラック番号などが表示された


 手元にあった37インチのパソコン用液晶モニターを接続してみると、水玉のようなものを背景に何曲目なのかなど、必要な情報が表示されました。UBP-X800M2をインターネットに接続すれば、もっと情報が表示されるのかもしれませんが、そもそもCDを聴くには画面表示自体が邪魔なので、ネットに接続しようとは思いません。それにしても、大画面で水玉を表示し続けるなんて、なんだか自分が間抜けに思えてしまいます。


リモコンにある「OPTIONS」というボタンを押してみても、音質に関係ありそうな機能は見当たらない
リモコンにある「OPTIONS」というボタンを押してみても、音質に関係ありそうな機能は見当たらない


 新機能満載のブルーレイプレーヤーなので、きっとCD再生にもなにか効果的な機能があるだろうと考え、リモコンにある「OPTIONS」というボタンを押してみましたが、音質にかかわるものは無さそうでした。CDの音を色々なデジタル信号処理で高音質化する、といったことはしないようです。この点は肩透かしを食らいましたが、かえって音に変な加工をされないほうが安心なのでプラス要素だと思います。


同軸出力でのCD再生では、DC-81のパネルに常に44.1kHzと表示され、CD本来のフォーマットでDACに信号が伝送されるだけなことが分かった
同軸出力でのCD再生では、DC-81のパネルに常に44.1kHzと表示され、CD本来のフォーマットでDACに信号が伝送されるだけなことが分かった


 上の写真はUBP-X800M2でCDを再生中に撮影したアキュフェーズDC-81のパネル表示で、常に44.1kHzと表示されました。ですので、オーバーサンプリングなどといった加工は行われず、CD本来のフォーマットそのままのデジタル信号が同軸ケーブルで伝送されるのだと思われます。44.1 kHzで16 bitというフォーマットなら、どんなに古いDACでも使えます。

 音質評価ではまず、すでに示したスメタナ四重奏団によるモーツァルのトカルテット第17番と15番のCDを聴きました。1972年に行われた最初期のデジタル録音ですが、わずか14 bitの機器による録音とは思えない優れた音質で、私の愛聴盤のひとつです。目をつむって聴けば、まるで往年の高級CDプレーヤーで再生しているかのような音で、ベテラン愛好家でも、まさかブルーレイプレーヤーで再生しているとは思わないでしょう。オペラでもピアノでも、その印象は変わりませんでした。


パネル表示が無いという実用上の問題は、小型のモニターを乗せることで解決
パネル表示が無いという実用上の問題は、小型のモニターを乗せることで解決


 上の写真は、私の会社の社員がサーバーのメンテナンスをするときに使う、小型のHDMIモニターを接続した状態です。このくらい小さければ間抜けな印象も受けないので、パネル表示が無いという実用上の問題が解決しそうです。フルHDに対応した小型HDMIモニターは、1万円くらいからあり、ほかにも使えて案外便利なものです。

 さて、以上の結論です。UBP-X800M2しか試していませんが、仕様を見る限り他機種でも同様な結果が得られると思います。

・最新のウルトラブルーレイディスクプレーヤーは、パネル表示に問題があるものが多いが、音質的には案外無難で十分にCDプレーヤーの代替品となりうる
・本格的にオーディオ用で使うなら、別にDAコンバーター(DAC)が必要
・古いヴィンテージDACとも組み合わせられ、そのばあい落ち着いた音質が得られる
・今後CDの購入が減る人なら、ブルーレイプレーヤー1台だけでも十分

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