音響レンズ

 パーツやアクセサリーとしては、いまのところ音響レンズを販売しています。電源基板などのアンプ製作用パーツを開発中で、2017年春頃に発売予定です。音響レンズは口径12インチ(30 cm)までのフルレンジスピーカーユニットや、ツィーターに適しています。ブルーフレームやレッドニップルといった愛称で有名なテレフンケン L6 やクラングフィルム KL-L307 といった、口径からは想像できないような再生能力があるものの、やや硬質な音のフルレンジスピーカーを想定して開発しましたが、AXIOM80 などでも良い評価をいただいています。軸上で聴くと音がきつく感じるばあいに有効です。また、フランジを組み合わせることで、コアキシャルスピーカーを自作することが出来ます。

 汎用音響レンズ LZ2010 (1枚) 25,000円(消費税別)

 直径 298 mm、厚さ 42 mm、重量約 2.4 kg、 材質は厚さ約 2 mm の鉄、黒つや消し電着塗装です。

音響レンズ正面を横から見た様子
音響レンズ正面を横から見た様子

 バッフルに直径 300 mm の孔を開け、バッフルの裏側にユニットと音響レンズを固定するためのサブバッフルを用意します。サブバッフルは金属板か厚さ 5.5 mm 以上の合板(ベニヤ板)が適しています。音響レンズの固定で補強されるので、フルレンジ1発なら薄い板で十分です。あまり厚くすると、音響レンズとコーン紙との距離が開いてしまいます。コアキシャルにするばあいは、ツィーターのお尻がウーファーのコーン紙に接触しないだけの厚さが必要です。サブバッフルにスピーカーユニットを裏から固定するのに適した直径の孔を開けます。

 まず、サブバッフルの表面に音響レンズを固定します。固定にはサブバッフルの厚さよりも 3 〜 5 mm 長い 4 mm ネジ8本を使い、裏側からねじ込みます。スピーカーユニットが大きいばあいは、皿ネジを使って8本のネジの頭が沈むようにします。つぎに、スピーカーユニットをサブバッフルに裏側から木ネジで固定します。最後にサブバッフルをスピーカー本体に取り付ければ完成です。

音響レンズ正面を斜め下から見た様子
音響レンズ正面を斜め下から見た様子

 ツィーターを取り付けるばあいは、サブバッフルの表側にツィーターを先に固定してから、その上にかぶせるように音響レンズを取り付けます。サブバッフル開口の縁に厚さ 5 mm 程度のネオプレンゴム製戸当りテープを貼り、音響レンズとの間に挟んでデッドニングすることができますが、デッドニングしないで響かせて使用している方のほうが多いようです。

 この音響レンズを見ての印象は、クラングフィルムのオイロダインというスピーカーのことをよく知っているか否かで二つに分かれます。知らない人は換気口のフードみたいでダサいと感じ、知っている人は貴重なオイロダインの音響レンズをイメージして気に入ってくれます。マニア的でないリビングでは、音響レンズをサランネットでカバーするのも手です。この音響レンズは案外便利で、思わぬロングセラーになりました。

音響レンズ正面を斜め上から見た様子
音響レンズ正面を斜め上から見た様子

 音響レンズのフィンを1枚ずつ手作業で溶接した国内生産品(地元の工場)です。音響レンズは光学レンズの凹レンズに相当し、音を拡散させます。音の通過するフィンの隙間は約 12 mm ですので、20 kHz の波長約 17 mm よりも狭く、徐々に弱くなるものの高い周波数まで効果があります。一方、中央の音が通りやすい部分の幅が約 80 mm、音響レンズの厚みが約 40 mm と短いため、中音域では効果がかなり弱くなります。

カブトガニをひっくり返したような音響レンズ裏側
カブトガニをひっくり返したような音響レンズ裏側

 JBL など一般的な音響レンズのように、薄い材料で作ってフィンの隙間を狭めればもっと高い周波数まで拡散できますし、音響レンズを厚くすればもっと低い周波数まで拡散できますが、フルレンジスピーカーやコーンツィーターを対象にしているため、あまり高い周波数を拡散させると 高音が不足し、鮮度のない眠い音になってしまいます。音楽の根幹となる中音域も、あまり拡散させるとスピーカーユニット本来の音の味わいを損ねてしまいます。

クラングフィルム 42006 でホワイトノイズ再生時の音圧の周波数分布(後面開放箱に取り付けて軸上1メートルで測定)
クラングフィルム 42006 でホワイトノイズ再生時の音圧の周波数分布(後面開放箱に取り付けて軸上1メートルで測定)

 コーンスピーカーは音創りのため 4 〜 8 kHz あたりにピークのある周波数特性にしてあるばあいが多く、とくにビンテージスピーカーはそうです。上のグラフは Klangfilm(クラングフィルム)の 42006 という戦前に作られたフルレンジスピーカーの周波数特性で、やはり高音を持ち上げてあって、広くないリルニングルームでは、そのピークが耳障りに聴こえてしまうことがあります。この音響レンズは、そういう問題を緩和する程度に、控えめに音を拡散することを狙って設計してあり、フルレンジの名ユニットの経験が豊富な方が使用されることを想定しています。

裏面の上下左右に4個あるネジ止め用ステー
裏面の上下左右に4個あるネジ止め用ステー

 わたし個人(小林です)はフルレンジスピーカーが大好きで、安い「Sabaグリーンコーン」の弦の音色や、高価な「Klangfilm 42006」の不思議にリアルなピアノの音色などが気に入っています。しかし、ボーカルではどことなく乾いた声になってしまうので、オイロダインのようにホーン型ユニットを組み合わせたスピーカーのほうが好ましく感じてしまいます。それが、この音響レンズを組み合わせることで、少しだけホーンスピーカー的な響きが加わり、かなり満足できます。音響レンズの材質や形状、溶接方法を工夫するなどして、そのような響きに調整してありす。音響レンズを指で弾くと、一枚いちまいのフィンが異なる周波数で控えめに鳴ります。

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